最終更新日 2024年11月20日
●身体の細胞を直接的に検査
病院やクリニックなどの医療機関で、採血や検尿などは、多くの人が経験済みでしょう。
人体から得られた尿や血液、便、痰、鼻汁、関節液、腹水、胸水、乳房からの分泌物などの成分を分析したり、その中に微生物がいるかどうかを調べたりするのが、検体検査です。
血液による検体検査の場合は、微生物検査や、生化学検査、血球検査、内分泌検査、免疫学的検査など、多くの種類があります。
●各検体検査の役割
血液生化学検査では、肝機能や腎機能、コレステロールの異常、電解質の異常、血糖値などがわかります。
肝機能を表わすものとしては、AST、ALT、γーGTPがよく知られています。
腎機能を示すものには、尿素窒素、クレアチニンなどがあります。
コレステロールの異常は、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(TG)で調べることができます。
電解質異常は、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(塩素)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)などを調べます。
血糖値は糖尿病のスクリーニング検査としてよく用いられます。空腹時に採血することが重要です。
血球検査は、赤血球や白血球、血小板、ヘモグロビン(血色素)などを調べます。
赤血球やヘモグロビンは、貧血のスクリーニング検査としてよく用いられています。
白血球は、感染症や炎症の有無を表わす指標となります。
ヘマトクリットは、血液中に占める赤血球容積の割合を示しています。
また、赤血球の平均容積を調べるMCV、平均赤血球ヘモグロビン濃度を調べるMCHCという検査もあります。
これらを知ることで、鉄欠乏性貧血かその他の貧血なのかなど、貧血の種類を鑑別することができます。
内分泌検査はホルモンの量を調べる検査です。
免疫学的検査では、抗体が検出されるかどうかで自己免疫疾患などを診断する手助けになっています。
血液検査では、基準値を外れているということよりも、前回の検査と比べてどのように変化しているかということが重要視されることが多いです。
尿検査では、尿の色調や混濁を見たり、比重、PH、糖、蛋白、潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲンなどを調べます。
尿の色が乳白色に濁っている場合は、膀胱炎や腎盂炎などの尿路感染症が疑われます。
赤や赤褐色の場合は血尿の可能性があり、腎疾患が疑われます。
コーラ色の時は、IgA腎症が、麦茶のような色の時は肝障害が疑われるケースが多いです。
尿のpHは4.8~7.5くらいが基準値となっています。
尿路感染症になるとアルカリ性になる傾向があります。
尿糖が(+)以上になるのは、血糖値が160~190mg/dLを超えた時です。
血糖値が基準値内なのに尿糖が(+)以上の時は、腎性糖尿と言われ尿細管の再吸収能力が低下しているか、ドカ食いをした直後の採尿かだと考えられます。
尿蛋白や尿潜血が(+)以上の場合は、腎疾患が疑われて精密検査が必要になります。
ビリルビンやウロビリノーゲンが(+)以上の時は、肝疾患の可能性があります。
そして、尿検査には沈渣という検査があります。
これは、尿を遠心分離器にかけてその上澄みをプレパラートに載せて顕微鏡で見て調べるという検体検査です。
尿中に白血球や赤血球が出ていないか、上皮細胞などの腎臓や尿細管からの細胞は出ていないか、円柱と言って腎臓や尿細管からの細胞の集団は出ていないかを見ます。
また、がん細胞も時には尿沈渣で見られることがあります。
女性の場合、膣からの分泌物が尿に混入することがあり、偏平上皮細胞が見られることがありますが、偏平上皮円柱以外の円柱が尿中に検出されることは、健康人の尿ではありません。
このように、尿による検体検査では多くの情報を得ることができます。
便の検査では、便潜血反応が大腸がん検診の際に行われます。
喀痰検査は、肺がんの検診で用いられています。
鼻汁は、インフルエンザかどうかを調べる際に、鼻に綿棒を突っ込まれたという経験がある人も少なくないでしょう。
関節液は、関節リウマチや細菌性の関節炎の診断の際によく用いられています。
それ以外にも、お腹に溜まった腹水や肺に溜まった胸水を抜いて検査することもあります。
●手術が必要な検査もあります
そして、生検や組織検査、病理検査と言われている検査も、検体検査の1つです。
例えば、舌がんか慢性的な舌炎か判断が難しい場合に、舌の組織をほんの少しだけ切り取ってそれを顕微鏡で見ることで、舌がんか慢性炎症か、どのような状態になっているのかなどを見ます。
胃がんや肝臓がんなどでも、最終診断は病理検査(組織検査)の結果次第となります。
膠原病などの難病や、診断が難しいケースでは、診断を確定させるために、腎臓や神経、小唾液腺、筋肉などの組織を採取して組織検査を行うケースが多いです。
組織検査は、患者さんにとっては痛みを伴う侵襲の大きな検査となるので、むやみに何でもかんでも組織検査というわけにはいきません。しかし、診断を確定するためには重要な検査となります。
検体検査は、患者さんの協力がなくては行うことができない検査です。
検査の意義をよく理解して、検査を受けましょう。
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